生産ロットの大きさの変化の影響
生産ロットを小さくすると、仕掛品の量を少なくでき、工程間の待ち時間が短くなります。その結果、一連の生産設備を一定のペースで稼働させやすくなります。また、ボトルネック工程がどこにあるかも感覚的にわかりやすくなります。一方で、段取り替えの時間が増えるので、製品単体での時間効率、作業者の時間効率は低下します。
そこで、生産ロットを小さくして工程間の待ち時間を短くするか、生産ロットを大きくして工程自体の作業時間を短くするかのトレードオフが生じます。
多種少量生産の工場では、待ち時間>作業時間 となっていることが多いと思われます。待ち時間を短くするために生産管理部門としてはロットを小さくしたいのですが、作業者としてはロットを小さくすると作業効率が下がるため、ロットサイズを小さくするのには抵抗しがちです。
ここで、ロットの大きさを変えるとどのくらい待ち時間や段取り時間が変わるのかの報告を紹介します。
サイクルタイムはlot sizeの線形関数で,待ち時間は サイクノレタイムには直接影響しない。又,遊休時間は, lot sizeに比例して大きくなるが,最終工程に遊休時間が発生する場合はそれだけ最終製品の平均在庫量が減少するので,遊休時間に対する費用と在庫費用のかねあいを考慮する必要がある。目的関数について検討すると段取替時聞が含まれておらず,段取替時間の大小には関係なし生産速度と要求速度の大小によって在庫関連費が変動することがわかる。
段取替費用(1回当り Cs)がn倍になると lot sizeは√n倍になることは,単一工程多品目モデルでも同様である。
愛知工業大学 紀要第13号 1978
https://repository.aitech.ac.jp/dspace/bitstream/11133/441/1/%E7%B4%80%E8%A6%8113%E5%8F%B7B(P133-138).pdf
つまり、ロットサイズを1/2倍にすると、遊休時間(設備を動かせられない時間)は1/2になります。一方で、ロットサイズを1/2にすると、段取り時間は1/4倍にする必要があります。遊休時間の減少度合いよりも段取り時間の減少度合いが少ないので、ロットサイズはできるだけ大きくしておきたいという作業者の抵抗もうなずけます。
生産管理部門としては、生産ロットを小さくすることによって遊休時間を減らす場合、段取り時間はその減らした時間の2倍長くなる、と理解しておきましょう。